現代の家族とこれからの家族〜時代と共に変化する家族の在り方〜

現代の家族とこれからの家族〜時代と共に変化する家族の在り方〜

未婚率や離婚率の上昇や、共働き家庭の増加など、時代と共に家族の在り方は変化しています。子供にとって一番身近な存在である家族は、成長過程で様々な影響を与えます。今回は、中央大学文学部社会学専攻教授の山田昌弘先生に、現代の家族とこれからの家族について伺いました。

中央大学山田昌弘教授の顔写真
Photo by 大浦タケシ

山田昌弘(やまだ・まさひろ)/1957年、東京生まれ。1981年、東京大学文学部卒。1986年、東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。現在、中央大学文学部教授。専門は家族社会学。学卒後も両親宅に同居し独身生活を続ける若者を「パラサイト・シングル」と呼び、「格差社会」という言葉を世に浸透させたことでも知られる。「婚活」という言葉を世に出し、婚活ブームの火付け役ともなった。主な著書に、『近代家族のゆくえ』『家族のリストラクチュアリング』(ともに新曜社)、『パラサイト・シングルの時代』『希望格差社会』(ともに筑摩書房)、『新平等社会』『ここがおかしい日本の社会保障』(ともに文藝春秋)、『迷走する家族』(有斐閣)、『家族ペット』(文春文庫)、『少子社会日本』(岩波書店)、『日本はなぜ少子化対策に失敗したか』(光文社)、『「家族」難民』『底辺への競争』『新型格差社会』(朝日新聞出版)、『パラサイト難婚社会』(朝日新書)などがある。


中央大学文学部社会学専攻ウェブサイト:https://sociology.r.chuo-u.ac.jp/news/4

山田昌弘researchmap:https://researchmap.jp/read0008730?lang=ja

家族社会学について

「家族社会学」とはどのような学問ですか?

家族を社会学的に研究する学問で、家族を社会の中に位置づけたり社会の変化が家族にどのような影響があるかを研究しています。ただ、家族のありのままの姿を示すのが目的なので、あまり明るいものではないですね。ありのままの姿ってみんな見たくないんですよ(笑)

私自身、父親の借金や母親が寝たきりという、あまり恵まれない環境で育ったことも、家族社会学を専門とした背景の1つにあります。

現代の家族にはどのような特徴がありますか?

核家族、事実婚、未婚、離婚、再婚、また子供を持つ持たないなど、家族の在り方は非常に多様化してます。一時点で見ればいろんな家族がいるということになりますが、時間軸でみてみれば、家族に関わるリスクが増えたとも言えるでしょう。

今の70代後半ぐらいの人たちは、ほとんどの人が結婚して離婚もせず、子供を育てて豊かな生活を築き一生が終わるという人生でが多いです。近年では25%の人は一生結婚しないと見込まれますし、結婚しても3組に1組は離婚しています。離婚しても再婚することがあるかもしれないし、働き方に関しても、専業主婦になる時期、共働きの時期もあれば、1人で子供を育てることになるかもしれない。つまり将来自分の辿る家族が予測がつかない時代になったということです。

自分が結婚したいと思っても結婚できなかったり、結婚できたとしても離婚してしまう。専業主婦でいたいと思っても、経済的に共働きしなければいけないこともあるでしょうし、子供も思ったように育ってくれるわけでもないのです。その子供も結婚するかどうかもわからない。家族に関わるリスクが増えたというのはこういうことです。

子育て世帯の家族の特徴

家族のイメージ写真

子育て世帯、とくに共働き世帯における家族にはどのような特徴がありますか?

共働きといっても両親の働き方のスタイルは様々なので、共働き家族の特徴を一括りにするのは非常に難しいところです。ただ、共働き世帯の母親の三分の二はパート勤務なので、夫は仕事中心で妻が家事育児を担い多少パートで仕事するという家族がいまだに日本の大多数ではあります。逆に夫婦とも正社員で働いている共働き家族はそんなに増えていません。最近では、あまり好ましくはないですが非正規雇用同士での共働きも増えています。

家庭内の家事育児の役割で言うと、共働きの女性の多数派がパートなこともあり、女性側が家事育児を担っている傾向は前述しました。様々な調査があるのですが、家事育児の負担は女性の収入の多さに依存するというのが家族社会学の結論です。妻の収入が夫の収入の半分以上だと加速度的に家事育児の負担に変化が起きると言われていて、夫の年収が600万だったら妻は300万以上稼いでいるかどうかが分岐点になるようです。

妻がパートだったら、経済的な寄与分が多少しかないので、夫は妻に任せようとなりがちです。 逆に男女の収入が同じぐらいだと、男性側は、家事育児に参加しないと「離婚されるかもしれない」という心理になります。

家事育児も平等にやりたかったら、せめて夫の半分以上は稼がないと家族の関係にはなかなか変化は起きないということです。

共働き世帯で夫婦関係を良好に保つためにできることはありますか?

子供も含めて趣味を一緒にするというのが良いパターンかなと思います。

子育て中は、子供の成長や教育のために2人で頑張るといういわゆる「子育て共同体」になっている夫婦は多く、子育てが終わった途端に「なんでこの人といるんだろう?と」なることが多々あります。また、収入格差がそんなにない共働き夫婦においては、二人で一緒にいる意味を常に問わなければいけなくなってきます。

子育てが落ち着いた後にも良好な関係を長く続けるには、趣味を一緒にしたり旅行に行ったり、一緒に楽しい時間を過ごすことを心がける、そして、お互いに夫婦でのコミュニケーションを大事にすることが大切かなと思います。

子育て中の夫婦関係は子供の成長にどのような影響を及ぼしますか?

両親の不仲や離婚は、子供の成長にあったとしても大きな影響がないだろうと思います。アメリカでは、両親が離婚し母親に育てられた女子は学校の勉強を一生懸命頑張り、学歴が高くなる、というようなデータがあります。日本では両親の仲が悪いと結婚しにくくなるというデータはあります。どちらにしろ、仲が悪い所を子どもに見せるのは、避けた方がよいでしょう。

今後の結婚観・家族の在り方

結婚の多様化をイメージした画像

子供が生きる未来で「結婚」はどのような価値になっていますか?

今とあんまり変わらないように思います。未婚者の9割は結婚したいと思っているわけで、結婚した人も含めれば95%は結婚したいと思っているからです。

パラサイトシングルのような親と一緒に住んでるから寂しくないという人でも、やはり親が亡くなった後とか、特に女性の場合は老後1人でいたくないと思っていて、自分の居場所として結婚、そして出産を求める傾向があります。

昔のように家や親戚が助けてくれる時代ではなくなったからこそ、結婚というかたちで自分で居場所を作っていくという時代になるのかなと思います。

子供の恋愛・結婚の価値観が多様化する中で、親としてどのような関わりが必要でしょうか?

価値観はそんなに変わってないと思いますよ。例えば、昔からLGBTQの人はたくさんいらっしゃったし、自分の性的指向を隠して、偽装結婚してた人も多いわけです。同性婚がオープンになっただけで昔から同性愛の人などが少なかったわけではないのです。

前述の通り、親があまり仲良くないと恋愛や結婚をためらう人が多いというデータはあるので、夫婦で子供を置いてデートする姿を子供に見せるなどすると、子供が恋愛や結婚をポジティブに捉えられるのかなと思います。1番身近なモデルですし、恋愛結婚したはずなのに、ほとんど口を利いてない両親となると、やはり結婚する意欲は失われますよね。

異次元の少子化対策で少子化は改善するでしょうか?

今の対策ではあまり変わらないのではないでしょうか。子供3人以上での大学無償化も、2人以上だったらすごいインパクトがあったと思うのですが、3人となるとほとんどの人は関係ないになっちゃいましたよね。ないよりはマシなのかもしれませんが、これから結婚して子供を持つかどうかと考えている人には遠すぎる話で、出産の後押しにはなりにくいです。なんだかんだ言っても、この先も25%は結婚しないという状態が続くことになると思います。

山田昌弘先生を詳しく知りたい方はこちら

中央大学文学部社会学専攻ウェブサイトはこちら https://sociology.r.chuo-u.ac.jp

山田昌弘先生紹介ページはこちら https://sociology.r.chuo-u.ac.jp/member/detail/79

編集部コメント

家族に関する興味深いお話をたくさん伺うことができました。結婚しない人が25%、3組に1組が離婚してしまう、家族を作ることは簡単なことではなく、また家族を維持するのも難しい世の中になっているなと感じました。我が家は再婚同士の夫婦だからか、お互い期待値が低いこともあり?夫婦仲は良好なのですが、子供が将来恋愛・結婚にポジティブなイメージが持てるよう、今まで以上に夫婦仲良くを心がけていこうと思いました。